5/14 Sat. 14:00-19:00 月例ロービジョン研究会 - KL Vision 2011報告会 -(2)

第10回国際ロービジョン学会 KL Vision 2011で行われた発表の内容についてシェアしながら勉強した。

  • P.1.1 Neurologic Vision Impairment: A New Direction for Low Vision Research and Rehabilitation
    Gregory Goodrich, VA Palo Alto Health Care System, USA
    中枢性視覚障害、ロービジョン研究とリハビリテーションにおける新しい動向 ISLRR賞をもらったGoodrichの講演で、比較的最近サービスの対象に含まれて来ている中枢性の視覚障害についてレビューしたもの。脳の損傷は年間に数千万人も生じるが90%は軽度だが、2020年までに障害原因の中でかなり重要なものになりそう。USでは48万ドル以上の経済損失とも。 20-40%は症状が残り視覚障害を経験するという説もある。WHO(www.who.int/blindness/en)によれば、世界的には、2億8500万人が視覚障害だが、現在はこの視覚障害の分類に脳損傷によるものは入っていない。損傷部位によりさまざまなタイプの視野障害、調節障害、輻輳不全、眼球運動障害、固視不安定、斜視などが出ることがある。共通してみられる初見として、光過敏、物への衝突・躓き、道に迷う、読書困難(読んでいる場所が分からなくなる)、疲れやすい。視力や視野にほとんど問題のない軽度の脳損傷の患者でも、1/3に眼球運動障害や輻輳不全、調節不全がおこる。が数日から数ヶ月で回復する。脳損傷による視覚障害では、標準的なロービジョンの評価や道具で対処できないことが多く、コミュニケーションが困難なことが多く、麻痺や虚弱、感情障害、記憶障害などリハビリを困難なことも多い。このグループへのリハビリとして、サービスの提供方法を修正したり、新しい訓練やリハ技術を総合リハプログラムとして提供できるようにしていく必要がある。
  • P.1.2 Indication and Training Protocols to Provide "Vision" Aids:
    Advice of supporting devices, selection and practice
    Prof. Aart C. Kooijman, PhD; Frank J.J.M. Steyvers, PhD; Bart J.M. Melis-Dankers, PhD; Else M. Havik, MSc
    University Medical Center Groningen, and Royal Visio, The Netherlands
    この発表は、配布されたPDFの内容と全く異なっていた。 補助具を提供するモデルとして、「BASIC」補助具の選定+購入のみで、何か問題があれば連絡を下さいというレベルのサービス。「デラックス」選定+購入+簡単な説明と利用評価 、「エクゼクティヴ」初期評価+補助具ローン+訓練+利用評価+購入+評価という3種類が考えられるが、初期評価をしないBASICは良くないが、文献をレビューする限り、何でもエクゼクティヴモデルで行う必要はなく、ETAなどの複雑な補助具ではそれが必要だが、CCTVなどではデラックスモデルで十分なのではないか?

    # ちなみに、iPad2によるスライド発表:その場でピンチイングでスライド一部を拡大表示!iPad2では画面をミラリングできるようになった。

  • P.1.3 Implementation of an Evidence-Based Guideline for Ophthalmologists on the Referral of Visually Impaired to Rehabilitation
    G.H.M.B. van Rens; H.L. Vreeken; J.K. Cruysberg; E. Hagelaar; R.M.A. van Nispen
    VU University Medical Center, Amsterdam, The Netherlands オランダには30万人ほど視覚障害人口があるが、サービスも補助具も保険でカヴァーされるし、オランダでは全員が保険に加入している。全土に22の総合リハセンターがある。2004年に眼科医がロービジョンの患者をリハビリに紹介する方法のガイドラインができた。そのガイドライン導入の前後で紹介が増えたかどうかを調べると、残念なことに増加していなかった。ガイドライン導入以前、リハセンターに来る患者の37%が眼科医から紹介されていたが、導入後の3年間40%程度で全く変化がなかった。地域差は大きく統計的に有意で、良く紹介している地域の医師はリハビリセンタの創設に関与していた。研修医だった時期にどこで研修を受けたかも影響しているようであった。ガイドラインにICOが関心を示していて国際的に一般的になってくるかもしれないが、利用を進めるには、研修医の教育プログラムに含めることが重要だろう。
  • P.1.4 Effectiveness of Visual Rehabilitation in Patients with Age-Related Macular Degeneration
    Nhung Nguyen; Susanne Trauzettel-Klosinski
    Vision Rehabilitation Clinic and Research Lab, Center for Ophthalmology, University Tuebingen, Germany ドイツの眼科医のKlosinskiの指導でマレーシアの眼科医がAMDによるロービジョンの患者に対して、どういうリハビリテーションの選択肢があるのか?その選択肢は、どのように効果があるのか?ということを、科学的にデータに基づいて述べようとした講演(マレーシアの人たちは、この国際学会の誘致をきっかけに、国内のロービジョンサービスを確立しようとした。そして、ほとんど全部のセッションに必ずマレーシアの発表を盛り込んだ。質は確かに若干低いが、世界的なレベルに達したということの証明にはなっていると感じられた。逆に言えば、このレベルの発表を日本から出来ているか?仮に日本で開催したら、このレベルの発表ができるのか?ということを自問するきっかけとなる)。

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Last-modified: 2011-05-15 (日) 00:51:51 (4739d)